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プンジ

プンジ

20分 南アフリカ/ケニア 2009年 カラー 監督:ワヌリ・カヒウ

Inspired Minority Pictures

キャスト アーシャ: クドザニ・ モスウェラ ビンティ : ニコル・ベイリー 他

“ケニア初のSF(短編)映画”がちょっとした話題だ。5月に開かれたカンヌ・インディペンデント映画祭で最優秀短編映画賞を受賞した『プンジ』のことである。

舞台は近未来、“水戦争”と呼ばれた第三次世界大戦の35年後の世界で、地球上から生命はほぼ死に絶えた。人類は広大な砂漠と化した東アフリカの大地に外界と隔絶されたコミュニティを作り、コンピュータ管理のディストピアの中にかろじて生き延びていた。自然はもはや人間に何も与えてくれず、コミュニティは運動による発電や、汗や排泄物まで再利用するシステムでかろうじて成り立っている。

自然史博物館の学芸員アーシャ(クドザニ・ モスウェラ)のデスクの前には「世界最後の木」が展示されている。もはや草や木は博物館で見る歴史遺産となり果てていたのだ。ある日、アーシャのもとに差出人不明の小包が届き、中には一握りの土が入っていた。アーシャがそこに古い種を植えてみると、この近未来世界ではあり得ないことが起こった。種が発芽したのだ。この土は生きている!と驚いたアーシャは、地球を救うかもしれない土を探しに行こうとするが、外界行きは許されない。しかし、種の萌芽に衝き動かされたアーシャは、禁を犯して一人、広大な死の砂漠の中に土を探す旅に出る。

“水戦争”後の世界を描いた本作がカンヌでの受賞に沸いたちょうど同じ頃、アフリカから水利協定合意が難航とのニュースが届いたの何とも皮肉な話だ。エジプト、スーダンからウガンダ、ルワンダまでナイル川流域9カ国が関わる重要な協定だが、取水量を死守したい下流と、拡大したい上流の利害が衝突しており、『プンジ』の世界があながちSFの中だけの話とも思えなくなってくる。

監督のワヌリは、1998年のナイロビのアメリカ大使館同時爆破テロを題材にした長編で、数々の賞を受賞した新進気鋭の女性監督。超人的なプロポーションとベイビーフェイスが印象的なアーシャ役のクドザニ・ モスウェラは、ボツワナ出身のファッション・モデルで、本作がデビュー作になる。一方、製作はケープタウン(南アフリカ)であり、監督が言っている通り、様々な地域の才能が集った非常に「パン・アフリカン」な映画で、その低予算映画とは思えない質とともに、国境を超えた今日のアフリカの映画製作状況をよく表している作品としても面白い。

by 吉田未穂 MIHO YOSHIDA


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シネマアフリカ2013概要 | 上映スケジュール | 上映作品一覧

上映スケジュール 5月22日(水) 13:00 ~ 14:10 ※短編5作品同時上映
5月23日(木) 14:30 ~ 15:40 ※短編5作品同時上映

※上映時間、Q&Aなどは変更が生じる場合がございます。あらかじめご了承ください。