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キューバのアフリカ遠征
Cuba: An African Odyssey

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190分/ドキュメンタリー/フランス・エジプト/2007年/監督ジハン・エル・ターリ

ネルソン・マンデラが27年間の投獄から釈放され、最初に会いにいったのはカストロだった―キューバが冷戦時代のアフリカで果たした役割はその大きさにも関わらず、内実はあまり表舞台に出てこない。本作は、1965年、チェ・ゲバラがタンガニーカ湖を渡ったその日から、1991年の全軍撤退までのほぼ四半世紀にわたるキューバのアフリカへの関与を追う。キューバのアフリカにおける光と闇を全て扱った訳ではないが、南アの解放運動への支援、チェ・ゲバラのコンゴ派兵とその失敗、続くギニアビサウのカブラルへの支援、そしてアンゴラのネトへの支援、13年に及んだアンゴラ駐留などが圧倒的な量の映像と資料で語られる。

数々の知られざる歴史が関係者の証言で復元されているが、有名な割には謎が多いチェのコンゴ派兵もその一つだ。ルムンバ暗殺に衝撃を受けたキューバはアフリカ解放運動にテコ入れすべく150名の精鋭黒人部隊をコンゴのルムンバ派に派遣する。福音となるはずの援軍はしかし、チェの存在がアメリカを刺激し外圧を呼び寄せ、一方、現場ではコンゴ兵とキューバ兵の間に軋轢が生まれ行き詰まる、といった大筋だが、関係者の証言は歴史の一コマを生き生きと甦らせる。初めて黒人のみの部隊を編制したキューバ軍人たちの誇りと戸惑い。海しか知らない精鋭キューバ軍がいかにタンガニーカ湖のワニを恐れたか。チェという大きすぎる存在に戸惑うコンゴ側の本音。そして、野営地に妻子を伴い、夜になると(戦地なのに!)大音量の音楽を楽しむコンゴ兵に度肝を抜かれるキューバ兵たち。「墓穴のようだ」と塹壕を掘る事も使う事を拒み、ゲリラ戦の最中にも平然と休暇を申請するコンゴ兵と、革命思想に燃える職業軍人からなるキューバ軍の団結は難しく、「相手の文化を尊重しろ」と両者の仲裁に骨を折るチェの姿も人々の証言によって描かれる。

監督のジハン・エル・ターリはベイルート生まれのエジプト人。80年代から中東をフィールドにテレビ報道でキャリアを積んだパワフルな女性監督だ。最新作『虹の背後で(Behind the Rainbow)』では、ムベキ前大統領とズマ大統領の二人を通じてANCが解放運動から与党へと変化する過程を描きフェスパコの最優秀ドキュメンタリー賞を受賞。今年のエジプト革命の際にはタハリール広場に飛び、現地から発信を続けてくれた。現在はエジプト革命を描く次回作を準備中とのことで、期待が膨らむ。

190分に及ぶ大作は「(武装闘争は終わり)手段は変わったが、アフリカの真の独立を目指す闘いは続いている」との言葉で締められる。“民主化”が戦闘機に乗って北アフリカに荒々しく舞い降りたこの秋、あらためてじっくりと見たい作品である。

by 吉田未穂MIHO YOSHIDA

DoDoWorld2012年2月号掲載「アフリカを観る」


▼シネマアフリカ2013 映画祭上映作品▼

シネマアフリカ2013概要 | 上映スケジュール | 上映作品一覧

上映スケジュール 5月21日(火) 19:00 ~ 20:30 ※[コンゴ篇]上映
5月23日(木) 16:30 ~ 18:08 ※[アンゴラ篇]上映

※上映時間、Q&Aなどは変更が生じる場合がございます。あらかじめご了承ください。