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森のこども ウォレ・ショインカ
Wole Soyinka: Child of the Forest

King Baabu Pressekonferenz

52分/ドキュメンタリー/南アフリカ/2009年/監督アキン・オモトソ

ナイジェリアには、強盗に教われても顔を見せれば、強盗がおそれをなして退散していく人物が二人いたという。一人がアフロビートの創始者フェラ・クティで、もう一人が作家ウォレ・ショインカだ。それだけ圧倒的な尊敬を受けている傑物なわけである。

ショインカは詩人であり劇作家であり、初のアフリカ人ノーベル文学賞受賞者として知られている。と同時に「沈黙は死」と繰り返し、不正選挙に激怒してラジオ局を乗っ取ったり、ビアフラ内戦で政府に異を唱え逮捕されたりと、必要な時には大きく声と拳を振り上げる「行動する作家」でもある。そんなウォレ・ショインカを描いたドキュメンタリーが本作『森のこども ウォレ・ショインカ』だ。

息子たちを含めショインカを知る人々の言葉(サブサハラ初のノーベル文学賞受賞者ナディン・ゴーディマも!)やショインカ自身の言葉で彼の人生が紡がれていく。ショインカの魅力は活字となった作品だけには収まりきらず、彼自身が生ける作品であり、彼の口から発せられる言葉は、時に人の心を射抜き、時に人を覚醒させる。作中のアニメーションはかなり残念な出来だが、それでもショインカ本人が自信について、作品について、内戦時代について、ナイジェリアについて、世界について語る映像の数々は、ショインカの生の言葉の魅力が詰まった見る詩集のような魅力を作り上げている。

監督はナイジェリア出身で南アフリカで制作を続けるアキン・オモトソ。SABC放送など南アのTVシーンで俳優として活躍してきた青年だが、2003年に自らのプロダクションを立ち上げ監督業へ乗り出した。南アフリカという複雑な社会の中で外国人としての眼差しを持ち続けるオモトソは、最新作『Man On Ground』では、南ア社会で広がりつつあるゼノフォビア(外国人嫌悪や排斥)を描きトロント映画祭でも話題となった。

ナイジェリア出身の彼がショインカをテーマにするのに何の不思議もなかったが、実は監督とショインカには知られざる交流があったという。「1986年11月のある夜、ショインカのノーベル賞受賞を祝って二人の少年が短い劇を上演した。舞台は少年の家のリビング。観客は少年たちの両親と受賞者本人のショインカ。その少年の一人は僕だった。当時12歳。僕にとってこの作品はあの夜のお祝いの続きなのだ(監督談)」

本作は南アの放送局M-NETのドキュメンタリーシリーズ「アフリカの偉人たち」の一つとして制作されたものだが、語り口にはショインカへの愛がにじみ出るというよりは、溢れ出ているといった方が的確かもしれない。12歳の少年の心が、強盗もひれ伏す同胞の巨匠に向けてありったけの愛を込めて撮ったラブレターなのだろう。

by 吉田未穂 MIHO YOSHIDA

作品情報


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上映スケジュール 5月22日(水) 17:00 ~ 17:52

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