Cinema Africa
アフリカが語るアフリカを日本へ | シネマアフリカ
2007 Archive

● 長編映画

『四月の残像』
 (140分 フランス/アメリカ/ルワンダ
 ラウル・ペック監督 2005)

 虐殺に翻弄されたルワンダ人兄弟を通して悲劇の全容を描く。ルワンダ軍で働く兄オーガスティンは、フツだが、妻がツチであるため、危うい立場に置かれている。一方、弟オノレは、虐殺を焚きつけた悪名高い扇動ラジオ局のDJ。弟は、扇動放送を続ける一方、兄一家だけは救おうとするが、いったん上がった火の手は、フツの弟の予想さえはるかに超えて燃え広がっていった。十年後、二人はアルーシャの国際法廷で再会するが……。
 悲劇的な兄弟ドラマの間には、憎悪を生み育てた歴史、殺戮が組織化されるプロセス、国際社会の意図的な無関心、加害者を裁く国際法廷の矛盾など、ルワンダの人々が伝えたかったであろう事実が描かれる。

『ルワンダ虐殺の100日』
 (96分 ルワンダ ニック・ヒュージス監督 2001)

 虐殺をはじめて映画化し、その後のジェノサイド映画ラッシュの先陣をきった記念碑的作品。ツチのカップル、バプティスとジョセットは混乱の中、離れ離れになってしまう。バプティスは逃避行の末、反政府軍へ、ジョセットは避難した先の教会で、家族の身の安全とひきかえに牧師の妻とされ身ごもってしまう。頼りにした国連の軍隊にも見捨てられ、武装民兵たちに狙われたジョセットら数千のツチの運命は……。
 二人の引き裂かれた運命を軸に、かぎりなくリアルな虐殺の実像が、現場を目撃した者の目線から描かれる。演じるのはルワンダの人々。

● 緊急上映

『ホームランド』
 (90分 ルワンダ ジャクリーン・カリムンダ監督 2005)

1994年、監督のジャクリーン・カリムンダは20歳のときに虐殺で父を殺された。ルワンダが独立した1962年。カリムンダの母は当時20歳で、父親を殺された。この映画は、二つの世代の登場人物とともにルワンダをめぐる旅である。時を遡り、ルワンダの歴史や個人個人の視点、未公開の資料とともに、人々の物語を調和させる旅である。暴力と運命の起源に迫る。ワガドゥグで開かれるアフリカ最大の映画祭(2006年)でも評判になった作品。

● ドキュメンタリー

『記憶の守人たち』
 (52分 ルワンダ エリック・カベラ監督 2004)

 全国の虐殺の現場を訪ね歩き、犠牲者の遺族や、時に加害者が語る当時の状況を克明に記録する。ある者は、家族の血の海の中に倒れた記憶をたどり、ある者は、犠牲者の墓守りを続ける心境を語る。当時の恐怖から今だ逃れられず、今でも武器を肌身離さず携行する者もいる。頼る身寄りもなく老いていく男は、虐殺現場を見守り、記憶し続けることが精一杯の手向けと語る。
 自らも多くの家族を失った『ルワンダ虐殺の100日』のプロデューサー・エリック・カベラが虐殺10周年を機に、悲劇の記憶を風化させないために撮ったドキュメンタリー。全編を通じて事実の重みに圧倒される一作。

『わたしの目を通して』
 (43分 ルワンダ カビラ・マツ監督 2004)

 現在のルワンダの若者に焦点をあてたドキュメンタリー。94年の虐殺に直接巻き込まれた者、あるいは家族や友人、知人を失った者など、ルワンダの若者の大半が何らかの心の傷を抱えている。彼らは、演劇や絵画、音楽などを通して自己を表現し、トラウマを克服しようとしている。「若者」とはまた、94年の大虐殺で暴走した者たちでもあり、若者が虐殺を乗り越える、ということにはルワンダの深い希望が託されている。
『ルワンダ虐殺の100日』のエリック・カベラとカビラ・マツが共同で構想。

● 短編映画

◎若手監督の見たルワンダ

『卒業ふたたび 僕らは未来へ向かって歩き出す』
 (27分 ルワンダ アユーブ・カサッサ・マゴ監督 2006)

 青年サゴは、国一番の大学を優秀な成績で卒業、就職も無事決まり、卒業パーティを開いてもらう。そこでサゴはある男から「世界のもう一つの秘密」を教えてもらう。首都キガリで、数人の部下を従える有能なビジネスマンになったサゴだが、軽い気持ちで「秘密」に手を伸ばし……。現代ルワンダの一面がのぞける作品。

『サミィ、キガリへ行く』
 (32分 オマー・M・シボママ/ギルバート・ンダハヨ監督 2006)

 サミィは、貧しい農村での生活に嫌気が差して、友達シムチェゾを誘って、キガリ目指して村を出た。初めての都会は全てが新鮮だったが、新参者に都会は冷たかった。二人はストリート生活を余儀なくされる。サミィはバスの運転手になり何とか生活を良くしようと奮闘する。ある日、サミィの前に裕福な未亡人が現れ、サミィの運命は大きく変わり始めた……。

『ルワンダへ捧ぐ聖歌』
 (35分 ティエリー・ダシュミリマナ監督 2006)

 ツチの少女マルタ、フツの青年ルコンドは学校の合唱団に所属。ルコンドはマルタの美しい歌声に魅せられる。学校ではみな合唱に熱中し、誰がツチでフツであるかなど、もはやみんなの関心ごとではない。しかし、心を許し過去の悲劇を語り始めたマルタの話に、ルコンドは絶句する。マルタはツチであり、家族全員が虐殺されていた。ルコンドの脳裏に、フツ急進派武装民兵であった父と兄が次々とツチを殺していく光景が蘇り、自らも強制的にナタを持たされた記憶が彼を襲う。惹かれあい近づき始めた二人の間に、悲劇の記憶が甦る。