アフリカ映画案内
Anything is possible!
アフリカ・ユナイテッド
90分 UK・南アフリカ・ルワンダ 2010年 カラー
監督:デブス・ガードナー・パターソン
製作:マーク・ブレイニー、ジャッキー・シェパード、エリック・カベラ
キャスト:エリヤ・ンダヤムバジェ(ドゥドゥ)、ロジャー・ンセギユンバ(ファブリース)、サンユ・ジョアニータ(ベアトリス)、イブ・ドゥセンゲ(フォーマン・ジョージ)、シェリー・シルバー(セレステ)他
amazonイギリス、アメリカ、ドイツにてDVD(英語版)発売中
ルワンダ発の希望の物語がやってきた。憧れのワールドカップに行きたい一心で、ルワンダから南アフリカまで、大陸5000キロを自力で旅してしまった子どもたちの冒険物語だ。
どこか頼りないお坊ちゃまファブリースは、本当は勉強よりもサッカーが大好き。親友のドゥドゥは、親をエイズで失った孤児だが、世話好きで仕切り屋でみんなの人気者。ある日、ワールドカップ開会式に出演するサッカー少年の選考会が首都キガリであることを知ったファブリースは、ママの目を盗んで、ドゥドゥたちとキガリを目指す。しかし、せっかく無賃乗車に成功したバスは、なんと隣国コンゴ行きで、お金もパスポートもビザもなしに国境を越えてしまう。ワールドカップ行きが夢と消えたどころか、いまや不法入国者となったドゥドゥたちは大ピンチに追い込まれる。だが、そんな絶望の淵でドゥドゥたちが選んだのは、なんと、南アフリカまで歩いて行くこと、なぜならワールドカップという夢は絶対にあきらめられないから!こうして子どもたちの5000キロの冒険がはじまった。
本作が興味深いのは、ルワンダ人映画製作者たちがあたためていた物語が、ルワンダ人プロデューサーの手を経て、イギリスのプロダクションの目に留まり国際的な商業映画になったことだ。ルワンダの声がイギリスの翼を得て世界に伝わったアフリカン・ドリームだろう。ロンドンやトロントなど海外の映画祭でも、また東京の映画祭でも上映されたが、観客からの反応が最も熱い作品であった。
元気溢れる子どもたちの姿にも関わらず、背景に描かれているのは貧困やHIV、少年兵や売春といったアフリカが直面する問題の数々だ。しかし、困難が大きければ大きいほど、底知れぬバイタリティと智恵で問題を切り抜けていく子どもたちが描かれ、そこには打ちひしがれ、他人の助けをただ待つような人は出てこない。監督はルワンダにルーツを持つ英国人女性で、前作では虐殺の渦中での民族を超えた友情を描いた。現実を直視しながらアフリカの希望を描く作品が、大きな悲劇をくぐり抜けた国から誕生したことには、驚きとともにアフリカの底力を感じずにはいられない。そして、ドゥドゥが力強く言い切る“Anything is possible(どんなことだって可能なんだ)”という台詞は世界中の人々を励ましてきたが、今一番それを必要としているのは未曾有の惨事に立ち向かっている日本の私たちだろう。
by 吉田未穂 MIHO YOSHIDA
DoDoWorld 2011年5月号掲載
▼シネマアフリカ2013 映画祭上映作品▼ シネマアフリカ2013概要 | 上映スケジュール | 上映作品一覧 | |
上映スケジュール | 5月18日(土) 13:00 ~ 14:30 |
5月22日(水) 14:30 ~ 16:00 |
※上映時間、Q&Aなどは変更が生じる場合がございます。あらかじめご了承ください。